Thanatos*Hypnos




こんな退屈な楽園で



 「お前はいつからそこにいる?」

 「お前もいつからそこにいる?」

 こんな退屈な楽園に。

 「遥か太古より此処に」

 「遠けき未来までも此処に」

 お前の隣に。

 「なあヒュプノス」

 「なあタナトス」

 この限りなく横たわる時間をどうしてくれよう。

 永遠など厭わしい。

 「ではお前には死を与えようか」

 永遠から解き放たれ、お前の魂は静寂へと還るだろう。

 「ではお前には眠りを与えようか」

 退屈な楽園を飛び出して、お前の望む地の夢を見るが良い。

 「嗚呼」

 「嗚呼」

 なんということだ。

 我らは互いに絶対の死か永久の眠りしか与えられないのだ。

 他に与えれるものを持たない故。

 「哀しいな」

 「空しいな」

 それでも絶対の死を望むときは、永久の眠りを望むときは、与えてやろう。望むままに。

 唯一お前に与えれるものだから。

 「お前が死ねば私も死のう」

 「お前が眠れば私も眠ろう」

 お前の存在せぬ楽園などいらぬ。

 「なんだ」

 「なんだ」

 死でなく、眠りでなく、お前に与えれるものがあったではないか。

 「お前の望む限り存在しよう」

 「お前の望む限り此処に在ろう」

 こんな退屈な楽園で、未来永劫お前の隣に存在しよう。






             back or next