Cygnus




錯覚



 冷たい、凍たい、貴方の肢体。

 あんなにも温かい、暖かい、貴方だったのに。

 こんなにも貴方が冷たいのは、降り続く雪のせい?

 それとも俺が貴方を殺してしまったせい?

 俺の前に横たわるのは、冷たい貴方。凍たい肢体。冷たい貴方。凍たい死体。

 雪に埋もれて消えてしまったらいいのに、貴方の肢体。

 嗚呼でもダメだ。貴方の死体が雪に消えてしまうと、俺は貴方を雪から連れ出してしまう。

 爪が割れて、血が滴り、貴方の冷たい肌に俺の生温かい血が伝って、

 俺の生温かい血が貴方の冷たい肌を温めるから、俺は錯覚してしまう。

 貴方は死体ではなく、貴方は肢体なのだと。

 雪に埋もれて消えたいのは俺。




 最後に温かい貴方に抱きしめられたのはいつだっただろう。

 それが最期になるなんて、貴方がこんなにも冷たくなるなんて、

 貴方はこの運命を知っていたのでしょうか。






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