ただひとり
ただひとり、
「エスメラルダ」
君にだけは心許した。
「ここに来る途中」
その君はもういない。
「花を見つけた」
君の体はここに眠り、
「君に見せようかと思ったが」
君との想い出は心の奥深くに眠っている。
「きっと君ならそのままにしておくだろうから」
君は花のようだった。
「俺も摘まなかった」
この地獄の大地で、
「エスメラルダ」
君は優しく揺れていた。
ただひとり、
「エスメラルダ」
君にだけは死をもってでも逢いたいと想う。
「俺はよく君のもとへと逝った」
死という闇の世界。
「傷付き倒れ、その度に君のもとへ逝った」
君のいる処。
「けれど君は決して姿を見せなかった」
ただ君の温かさだけが、
「背に感じられた」
そして温かさが離れて、
「背を押して生へと帰してくれた」
君が生を望むからこそ、
「俺は生きている」
もしも君が寂しいのなら、
「もしも君が俺を憎むのなら」
もう背を押す必要はない。
「手をとって」
どうかそのまま、
「おやすみと云ってくれ」
君のもとへ還るから。
ただひとり、
「エスメラルダ」
君にだけは生死を委ねる。
「そろそろ行くよ」
君が眠りを望むなら、
「それでいい」
君のもとへ還れるのなら、
「それでいい」
けれど、
「今から背を向ける」
きっと君は、
「俺の手を取るも離すも君の自由」
いつものように、
「エスメラルダ」
背中を押してくれるのだろう。
ただひとり、
「エスメラルダ」
君だけを永遠に、
「いつか君のもとへと還れたら」
静かにふたり、
「眠りにつこう」
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