ずっとずっとたぶんあなたの愛とか優しさとか、そういうものが欲しかったのです。
そういうものが欲しくて、でも得られないので、得られる方法をずっとずっと考えていました。
28年間も考えていました。
神さまの愛よりも、世界の優しさよりも、あなたが欲しかったのです。
あなたがわたしに対して愛も優しさも持っていなくとも、最期辺りはそれでも良いと妥協していました。
そして今、何故かあなたとまた暮らしはじめて、
あなたの愛やら優しさやらをその意味まんま、この体全部で味わっているのだけれど、
いざ愛されると、優しくされると、怖くて逃げたくなります。
たぶんにわたしは愛することに慣れすぎて、しかもそれは過剰の愛だったのですが、
つまり愛することに慣れすぎていて、どうやって愛されていいかが解りません。
あなたが与えてくれるその手に触れたいけれど、いったいどのようにして触れたらいいのでしょう。
昔は喰いつきたいほど欲していたその手ですが、いざとなれば喰いつくことなんか出来ないものです。
おずおずとこの手を伸ばして、指先を少し触れさせ、
あなたの手がわたしの手を振り払わないことを確認して、
それからやっと少しだけあなたに心を許してもいいのかなと惑います。
最近思うのですが、愛することは簡単ですね、簡単でした。
愛されることの方が難しい。難解なことは嫌いです、心を使うのはもっと嫌いです。
だからどうか愛しすぎないで下さいね。心労でいつか倒れてしまうから。疑い深くてごめんなさい。
素直にあなたを信じ切れないわたしですが、あなたはそれでも愛してくれますか。
わたしがあなたに愛されることに慣れるまで待ってくれますか。
ついでにやっぱりわたしもあなたを愛していいですか。愛することのほうがわたしは好きです。
でもね、あなただけにはこっそりと教えます。
あなたに愛しているよと囁かれると、ああ生きていて良かったな、なんて思ってしまうのです。
つまり、なんというか、あなたに愛されることだけは、愛されることの中で唯一好きなのですよ。
|