Marcello*Kukule




ギャロッピング・インフレ



 皿を洗う音がキッチンから室内に響く昼下がり。

 マルチェロが日差しの注ぐ窓辺に置いた長椅子で寛いでいると、

 白いシャツを腕まくりしたククールが現れて云った。

 「何読んでんの」

 お決まりの腰に手のポーズ。

 マルチェロは片一方の肘掛とクッションに頭を預け、長身を横たえたままスルー。

 経済雑誌を捲る。

 「聞いてる?」

 ぺらり。

 「なあ」

 ぺらり。

 「…聞こえてますかー?」

 もう耳が遠くなったとか冗談じゃねえぜとぶつぶつ文句を云っている。

 放っておけば際限なく続くであろう呼びかけと面倒さを量りにかけて、

 マルチェロはとりあえずタイトルくらい読めと答えてやった。

 「経済月報…アレだろ、すごく堅い系だろ?おねーちゃんの裸とかないやつ」

 興味ねえんだよな、そっち系。と云う。

 読めと強制した覚えはない。そう思ったが黙って頁を捲る。

 ぺらり。

 「なんで今更そういうの読むの?生活に不自由しないくらい蓄えはもうあるだろ?」

 いざとなったらモンスター倒せばいいしさあやら、

 ベルガラックにもルーラで行けるしとぷちぷち珍しく口煩い。

 それを制す意味でもマルチェロは二言目を口にした。

 「おかげで一度は生活に不自由するはめになりかけたがな?」

 「あれはディーラーがイカサマしたんだよ。俺も久々で腕が錆びてたし」

 ふんとククールはそっぽを向く。

 そろそろか、とマルチェロは雑誌を床に伏せて置いた。

 「機嫌が悪いな」

 何が不満かと視線で問えば、ククールは苛々とマルチェロを見下ろした。

 「別にさ、アンタのために飯作るのも、皿洗いも、掃除洗濯もイヤなわけじゃない。

 けどなんかムカツク。俺がこんなにもしてるのに、アンタは相変わらず違うものが大切なんだ」

 つまり、かまってくれ、そういうことかとマルチェロは了解した。

 だいたい朝飯を作ったのは私だと云ってやりたかったが、まあ良いかと溜息。

 随分と丸くなったものだと思う。




 「なあ」

 不意にククールの声に甘やかな匂いが絡まった。

 かまう=コレとはとマルチェロは呆れたが、ククールは気に留めた様子もない。

 「まったく、昼間から」

 来いと手で合図を送れば、ククールはさっさとマルチェロの上に体を横たえた。

 顔だけを上げて、マルチェロの耳にふぃーっと息を吹きかける。

 「昼間からてのも好きだな。

 夜だけにするってなんだか、ほら、セックスレス夫婦が無理矢理やってる感じで」

 「私たちは兄弟だがね」

 「…はん、今更だろ。そんなの。乳繰り合おうぜ、あにきぃ」

 格別の吐息で囁く弟が晒した首筋をマルチェロは呆れ半分で吸ってやった。




 「でさ、兄貴。俺には今深刻な悩みがあるんだけど、相談に乗ってくれるか?」

 とククールが思い詰めたような真剣な顔つきで云うから、

 その冗談に付き合い、マルチェロも真剣な顔つきで返してやった。

 「私に出来る事があるならば、な」

 するとククール、マルチェロから体を離して、所在なさげにしょぼくれる。

 「なんと長椅子は狭くて、アンタの腰を跨いだら左足置く場所ねえの」

 「では背もたれに左足を上げてはどうかな?」

 「わお。んなやらしいポーズさせて、俺をどうするつもりなの、兄貴」

 どうするって。

 取って喰うに決まっている。

 などと云えばククールが飛び上がって喜びそうなので止めておく。

 「というわけで、上下チェンジしねえ?」

 ククールの後頭部がクッションに沈む。

 マルチェロの場所を確保するために脚を開いて、

 落ちた左足はとりあえずにっくき経済月報を踏みつけてやった。

 ぐしゃりとの音にマルチェロの視線がククールの左素足付近を漂うが、その両頬を挟んで修正。

 「キスして」

 こっち向いて。

 まあいい。

 明日は週間経済の発売日だからなと内心ひとつ頷いて、

 マルチェロはククールに誘われるがまま徐々にくちびるとくちびるの距離を詰めた。




 比例直線。

 接吻けが濃密になるにつれ、室内に響くふたりの息遣いも荒くなる。

 手始めに軽くくちびるを合わせたら、もう待ちきれないと解けるそれ。

 我慢のない奴だと舌を与えれば、待ってましたと絡みつく。

 ククールの後頭部とクッションの間に二の腕を差し込み、引き寄せ、更に深く深く。

 その内ククールの手が伸びてきて、マルチェロの貪る角度を調整。

 もっと奥まで舐めてと云わんばかりの弟に、喉の奥が鳴った。

 ならばお望みどおりに。

 「…む…う…んん…ぅ」

 絡めていた舌を一時解放し、両頬の裏、舌の裏を隙間なく舐め尽くす。

 「…っんぅ」

 特に舌の裏が感じるのか、ククールはマルチェロの頬を捉えていた手を思わず離す始末。

 気を良くして舌先を尖らせ執拗にそこを舐め上げる。

 すぐそこでククールの手が行き場をなくし、宙で細かに震え揺れているのが見えた。

 「っは…は…っ」

 それもうイヤ…。

 というようなことを云っているが、実際には「あ…あ…あ…」にしか聞こえない。

 舐め上げる合間合間に焦点を失い始めた眸を見据え云ってやる。

 「なんだ、お前はこれだけでイきそうなのか?」

 最後にこれでもかとれろり。

 彷徨った果て、漸く見つけた背もたれにククールの右手がはたりと落ちた。




 性悪な兄は口許を上げ、もうイったのか、などとしれっと云ってきた。

 「…イクかよ、キスくらいで」

 ククールはふいと眼を逸らす。

 マルチェロ腕から零れる見事な銀髪が陽光を受けて反射した。

 それに一瞬気を惹かれていると、ククールの不満声。

 「なに見てんの。経済月報?」

 ぐしゃりとまた紙が崩れる音がする。

 被害妄想があるのではないかとやれやれマルチェロ。

 「ね。もっと俺を労わってくれよ」

 アンタのためにこれから夕食作るんだぜ?と云う。

 「こんなに兄貴に健気に尽くす弟もいねえって。だからもっと労わって。サービスしてよ」

 その割には朝食も準備も、深夜のベッドメイキングもマルチェロがしているのだが。

 健気に尽くしているとは云い難い。

 「そもそも健気ならば見返りなど求めないはずだろう」

 「…じゃ健気取り消して、ご褒美とか。ほら修道院の頃みたいに」

 云いながらも、ククールは乱された呼吸を整えているようだった。

 乱されるばかりは昔とった杵柄が許さない。

 折角少しは刺激的になったのにとマルチェロは残念に思ったが、

 未だククールの体が与えられた快感を忘れられず弛緩していることも、

 腕の重みで解っていたのでお喋りを続けてやった。

 たまにはたっぷり時間を掛け、喰うのも良いさ。

 「それを云うならば団長の私を労わってくれても良かったのではないかね?」

 あの仕事量。

 ククールは悪戯に笑った。

 「だから、口でたくさんしてやっただろ?」

 まるでそこにマルチェロのものがあるかのように、ちろりと舌を出してれろり舐めるふり。

 「お前が問題を起こすから目を通さねばならんものが増えていたのだが」

 「…体も献上しました、団長殿に」

 「しかしそれはお前にとって褒美だったのだろう?」

 「う…いやまあ…互いに気持ち良かったということで万事解決?」

 ククールの眼が泳ぎ出す。

 マルチェロが黙っていると、ククールの手がマルチェロの項を押した。

 「続きして〜ん」

 マルチェロはククールの首筋に顔を埋めることで答えてやった。




 「ん…あ…あっ…ああ…っ」

 最早閉じることを忘れた口から鼻から抜けたような声が零れる。

 マルチェロの舌が首筋を行き来しているのが悪いんだ。

 ククールはそう決め付け、自らのシャツの釦を外しに掛かった。

 それを体の下で悟ったのだろう、マルチェロがククールの手を押し留めた。

 「私の愉しみを奪う気か?」

 「…だって、今日やけに焦らすから」

 「どうしても釦と遊びたいなら、私のを外しておけ」

 「脱がしていいの?」

 ククールの眼が碧くキラり。

 本来女を相手にすることを好むククールは、オトコの行為が好きらしい。

 マルチェロがククールのシャツの釦をひとつひとつ外しながら、舌を進めていく一方で、

 ククールは手を震わせつつもマルチェロのシャツの釦を解いてゆく。

 そうしてシャツの裾に両手を潜らせ、マルチェロの肌を愉しんだ。

 剣を扱うに最良の腹筋。厚い胸板。もうすぐいやらしくククールを突き上げる腰と腰骨。

 しなやかに鍛え上げられた鞭のような体。

 思わずうっとり撫でさする。

 「お前は触り方にまで品がない」

 マルチェロが鎖骨を舐め下しながら云うから、こそばさにククールは体を捩った。

 「やらしいのは兄貴も一緒だろ?兄弟だねえ、俺たち」

 マルチェロはククールの体を上から下へ、徐々に、舌で。

 ククールはマルチェロの体を下から上へ、少々性急に、手で。

 「あは…今さ、この辺舐めてるよな?」

 とククールの掌がマルチェロの胸あたりをまさぐれば、

 マルチェロの舌は完全に肌蹴られたククールの胸の頂を転がし、吸った。

 「あ…っん!あ…あ…」

 カリリとマルチェロの胸板にククールの爪が立つ。

 かまわずふたつの頂きを交互に可愛がり、マルチェロは次は?とククールに視線で問う。

 「あ…えと…こうして欲しい…」

 ククールの手がマルチェロの脇腹をさする。

 マルチェロの舌がククールの脇腹を急下降。

 「ひゃ…っ、あっ、すげえ感じる…っ」

 のけぞるククール。

 思わずマルチェロとの間に腕を突っ張ったが、そんなことは許さない。

 マルチェロより一回り細い腰を腕に抱き、下肢を覆う布を下着ごと少し下へとずらす。

 臍とアレの間に舌を這わせれば、ククールの背が浮いた。

 「やっ…中途半端にすんな…っ」

 暴れ出すククールの腰を更に強く押さえつけながら、マルチェロは愛撫を止めない。

 「中途半端が嫌なら、止めるか?」

 「…っは…ぁ、い…じわるだよな、ホント」

 浮き上がる肌蹴た胸と赤く咲く胸の頂の向こうから、ククールが睨んでいた。

 少し雨模様のその眼にマルチェロの胸が疼く。

 意地悪をされるその理由を少しは考えれば良いのにと内心笑った。

 「中途半端が嫌なら止める、以外の選択肢、あるだろ?」

 「さあて」

 すっとぼけてやった。

 ククールは一瞬大きく胸を上下。

 が、背に腹は代えられないのか、朱が差した頬を銀髪で隠して小さく呟いた。

 「もっと下まで来て…」




 それでも甘噛みすることは忘れない。

 「っん…ん…ふ…」

 味見をしているのだ、この兄は。

 ククールは銀の茂みに鼻筋を埋めたマルチェロを見下ろして、くらり。

 違う。そこじゃない。もっと下。つーか、明らかに勃ってるから見えないはずないだろ!と悶える反面、

 ああん、そこ。そこじゃないけど、そこも。もっともっとたっぷり焦らしてかまって欲しい。

 と身を捩ってしまうもうひとりのククールがいる。

 「どうして欲しい?」

 なんて意地悪して聞かないで。

 「わ…っかんねえよ…っ」

 思わず手の甲をくちびるにすれば、

 「手を吸って欲しいのか?」

 などと云う。

 おまけに折角漸くやっとのことで触れてもらえそうだったソコを手放して、

 マルチェロは上半身を起こし、ククールの手をとった。

 「…こんなところに自ら跡を付けてどうする」

 白い手にはキスマークもどき。

 マルチェロはククールの眼を見詰めながら、もどきの上にくちびるをそっと触れさせた。

 「…っあ」

 ずっくん。

 嗚呼これは胸のちりちりした痛みなのか、アッチのどっくんどっくんする欲望なのか。

 「あっあっ」

 マルチェロのくちびるがそのまま薄い皮をはみ、少しだけ引っ張る。

 「ああっ」

 もう我慢できないとククールはもぞもぞと内股を擦り合わせた。




 「なあ…もう挿れるか、イかすかしてくれよ…」

 ククールは腕で両目を隠したまま弱々しく吐息を漏らした。

 徐々に快楽に溺れて広がる両脚の間にはククールを無表情に見下ろすマルチェロ。

 その奥には彼の指、たぶん今2本。

 「は…ぁ、な…あっ、聞いてる?」

 蠢く指に汗が零れる。

 「き…聞こえてますかー?」

 「減らず口を」

 マルチェロは思わず口許を吊り上げた。

 ぐちぐちと音を立てる入口に指は残したまま、ククールの肌に肌を合わせる。

 中途半端に着崩れたシャツが汗で湿っていた。

 「欲しいのか?」

 「ここまで来て欲しくないとか、ありえねえ」

 腕の下からククールの眼が覗く。

 「アンタの指だけでも俺はイけるけどさ、ああっん…アンタも気持ち良くなれるもの頂戴」

 その眼がにやりと細まった。




 「さて、ククール。私には今少々悩みがあるのだが相談にのってくれるか?」

 とマルチェロが全く困っていない顔つきで云うから、

 そのろくでもない企みに付き合い、ククールもにへらと返してやった。

 「俺に出来る事があれば、喜んで」

 するとマルチェロ、ククールから体を離して、ふむと小首を傾げる

 「長椅子は狭くて、動くとなるとお前の脚が邪魔なのだがね」

 「長くてすみませんねえ」

 「ではこの長い脚をどうにかしてくれるかな、ククール」

 つつっとマルチェロの手がいやらしくククールの脚を撫で上げ捉える。

 思わず感じて不覚。

 「っんん。…じゃあ、右脚を背もたれに掛けるとしましょうか、おにいさま」

 「そんないやらしいポーズをして、どうするつもりかね?」

 どうするって。

 取って喰ってもらうに決まってる。

 などと云えばマルチェロの思うがままなので止めておく。

 その代わりに背もたれに脚を上げた。

 丁度膝の辺りで折れ曲がり、なかなかやらしいポーズだな、ホントと少し苦笑い。

 「M字開脚ってやつね」

 「全くMでないぞ」

 マルチェロは何処かの先生のように否定した。




 「ね…もういいから、来て。マジやばい」

 ククールは両手をマルチェロに差し伸ばした。

 頬の朱はより一層深みを増し、眸の淵は滲んだ涙で飾られていた。

 マルチェロは再びククールに肌を寄せ、その首の下に二の腕を入れる。

 そうしてもう片方の手をククールの頭に置いた。

 いくぞ、と首筋から耳へと吐息を駆け上がらせる。

 それにククールが身を震わしたところで、ぐっと先を挿れた。

 「あああっ」

 ククールの背がのけぞれば、その胸も反り返り、マルチェロの体も持ち上げられる。

 「いっ…あ…う…ぅうっ」

 今にも暴れ出しそうなククールの体を体で押さえ込む。

 胸を胸で押し戻し、ククールの背を長椅子へ。

 「…痛いか?」

 首筋を宥めるように舐めてやりながら問えば、ククールはふるふると首を小さく振った。

 早くなる呼吸に喘ぎながら云う。

 「もっと…奥まで…アンタこれじゃ気持ち良くない…だろっ」

 こんなにも兄に尽くす健気な弟はいない。

 そう云ったククールにそうだなと内心頷き、更に体を割り開いた。




 「はっんっ、あ…すげえ…どくどく云ってんの解る…」

 全ておさまったところでククールは口許を緩めた。

 ククールの激しい締め付けにマルチェロの全身からも汗が噴き出す思いだった。

 動いて。

 動くぞ。

 同時に云って生温い。

 「…あっ…あっ…は…っ」

 マルチェロの突き上げにククールの上半身がくねり出す。

 「…っは」

 その蠱惑的ダンスに誘われマルチェロの腰使いも荒くなる。

 「もっと擦って…っ」

 「注文が多いな…っ」

 「こんな我侭…あ…う…可愛いもんだろ…?」

 ずっずっ。

 ぬちゃぬちゃ。

 マルチェロは更に奥へと、ククールの首を抱いていた右手を抜き、

 その白くて長い左脚を胸につくくらい折り曲げる。

 経済月報が漸く助かったとばかり、紙擦れの音。

 「ひぁ…っ、なんか…イイトコに当たってる…っ」

 「当たっているのは、お前のこれだろう?」

 巧みに腹を使いククールのものを刺激してやった。

 「や…っ、らしいっ」

 「悪かったな」

 耳朶を舐め上げる。

 ククールは長椅子の背もたれに掛けていた脚をマルチェロの体に絡めた。

 持ち上げられた左脚以外の四肢でマルチェロを、ぎゅう。

 「悪くないぜ…?」

 顔を傾け、キスを強請る。

 焦らされずに激しく濃厚に与えられるそれに、そういうの好き、の言葉は呑み込まれた。




 「…で、夕食は私が作るのか」

 マルチェロは汗を吸いに吸ったシャツを脱ぎ捨てながら、

 長椅子でぐったり伏せているククールを冷ややかに見下ろした。

 「…だって、すげえ痛い…」

 そういうククールのシャツに手を掛ける。

 ククールは慌ててぶんぶんと首を振った。

 「あわわわ、もう腹いっぱい!三回目はきっついな〜なんて、えへ」

 えへえへと笑うククールに溜息ひとつ。

 「シャツを新しいものにするだけだ。自意識過剰なのではないかね?」

 「…なんだ」

 つまんねえの。

 という言葉は聞き流しておくことにする。

 さすがにそろそろ夕食の下拵えが必要だと今は夕日の差し入る窓の外を見やった。

 「でも兄貴が二回もがっついてくれるんだぜ?自信持って当然だとは思わない?」

 その言葉もスルー。

 二人の新しい服を取って来て、夕食の下拵えだと計画中。

 「今日は一人分で良いから楽だな」

 とマルチェロは口許を上げる。

 するとククール。

 「は?なんでだよ。兄貴、やり過ぎて気分悪いの?」

 不思議そうに尋ねるので、

 「先ほど腹いっぱいと云ったのはどこのどいつだ?」

 これでもかとイヤミたらしく云ってやった。

 とりあえず寝室へと服を取りに向かう背にクッションが襲ってきたが、

 ひょいとかわしてマルチェロは思わず声を漏らして笑った。




 その兄の背を見送りながらククール、ふと見下ろせばぐしゃぐしゃの経済月報。

 苦笑して拾い上げた。

 気持ちきれいに皺を伸ばしてみる。

 「八つ当たりしてごめんな」

 ぱらりと捲ってみたがやはり興味なし。

 「俺より魅力的なのかねえ、こんなのが」

 明日は週間経済の発売日だと思い出し、ククールは明日の敵に思いを馳せた。






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