散り菊の



 猫バアの紹介で訪ねた人里離れた山奥に住まう火薬師から幾つかの忍具を仕入れた帰り、イタチとサスケは元は花火師であったというその火薬師からそれぞれ一本の線香花火を譲り受けた。
 だが、まだ昼間の麓の道々、サスケがいったいどうしたものかとそれを持て余していると、隣を歩く兄がふと自らの顔の前にこよりの先を掲げた。
 ふっと吹いて玉に火を入れる。
 火遁だろう。兄はただ強い忍の術が使えるだけでなく、その扱い方に長けている。
 サスケも倣って火を点けた。
 橙の火球がじじと微かな音を立て、松葉のような激しい火花が玉の周りに浮かんでは散り、散っては浮かぶ。 
「競うか」
 と言う兄はきっと昔を思い出したに違いない。
 幼い日の夏の夜、あの懐かしいうちは家の庭で兄と二人、手持ち花火をして、最後に線香花火を競べた。あの時は兄をなんとか負かそう負かそうとしたけれど、
「いや、いい」
 今は兄と共にいつか玉の落ちる散り菊の頃を迎えたいとサスケは思うのだ。