だけども問題は今日の雨


※ 21才大学生イタチ×16才高校生サスケ
※ 兄さん一人暮らし


 先頃おれやイタチが住まうこの地方も例年に比べれば少し早い梅雨入りをした、という知らせは新聞かテレビかのニュースかで確かに聞き及んでいたことだ。
 けれど、出掛ける前にベランダから見上げた空は、曇りがちながらも今すぐに雨が降るといった様でもなかった。
 念のため干していた洗濯物は全て部屋の中に入れたが、
「サスケ、傘はどうする」
「邪魔だし、どうせ降ったところで大したことはないだろ」
「そうだな。降水確率も上がっているのは夜からだ」
「じゃあ要らねえ」
 などと新聞の予報欄まで確認して出掛けた先、見事に雨に降られた。
 それがいっそ途方もない雨量だったり、あるいは電車にでも乗って遠出をしていたのなら、諦めもついて何処かの店に入るか、傘を買うか、タクシーを拾うか、していただろう。
 だが、一時間程度出掛けた先は電車にもバスにも乗らない、徒歩十五分のスーパーマーケットだった。
 一人暮らしのイタチは週末になると泊まりに来るおれを伴い、よく買い出しに出掛ける。荷物持ちに連れて行くというよりは、それはどちらかと言えばイタチの役割で、素材からものを買って作っておきたいのはおれなのだ。
 イタチは放っておけば外食、それはまだ良い方で、腹に溜まるものをとりあえずなんてことや、好みの甘味だけ、更には今日は面倒なので抜いたなど、体に悪いことをありったけ平然とやってくれる兄貴なので、おれが面倒をみてやるしかない。
 勿論イタチは自炊も出来るが、父さんや母さんの目がないからとどうやら適当に羽を伸ばしているらしい。
「お前はイタチ兄ちゃんの母ちゃんか」
 腐れ縁のドベはおれのことをそう言ったが、ある日突然訪ねた部屋で兄貴が死んでいたら嫌だろうが。
 その上、慌てて搬送した病院で「死因は甘いもののみの摂り過ぎです。御愁傷様」などと告げられては家族全員本当に御愁傷様だ。
 だから、週に一度は兄貴を連れて買い出しに行き、高校一年になるおれの貴重な日曜日は大概ひねもす料理で暮れていく。
 そうして今日も買い物袋を提げて、さあ帰るかと五分程歩いたところで雨に降られた。
 傘はない。両手も塞がっている。ただ早足をすれば、イタチのマンションまで十分も掛からない。
「どうする」
「走ろう」
 おれたちにとって誤算だったのは、雨足がすぐに強くなったことくらいだろうか。
 食材を詰め込んだ袋を庇って部屋に帰り着く頃には、共に衣服はもちろん顔や髪から雨の滴が滴っていた。
 季節柄寒くはないが、服や下着がぐしょりと濡れているのは不愉快だ。また浄水でもないので、髪や肌もべとついている。
 それらをざっと玄関で拭いて部屋に上がったおれたちは、要冷蔵の品を手分けして冷蔵庫に仕舞いながら、風呂を沸かした。シャワーだけでも良かったが、どうせ冷蔵庫に詰めている間に沸くだろうということだったので、そうした。
 実際食材を仕舞って、着替えを用意し、部屋に干した洗濯物を摘まんで「中に入れて正解だったぜ」「これからは暫く乾燥機か部屋干しだな」ととりとめのないことを言い合っている内に風呂が沸いた。
 問題はどちらが先に入るか、ということだ。
「どうする、兄さん」
「お前が先に入れ。おれは後でいい」
「いいよ、アンタが先に入れよ。ここは兄さんの家だ」
「なら余計お前が先に入るべきだろう。泊まりに来ている奴を差し置いては入れない」
「いいから、先に入れって」
「お前こそ先に入れ」
「ふん、また兄貴面か?」
「面もなにも、おれはその兄貴だろうが」
 梅雨空の如く少々険悪な空気がどんよりと垂れ込め始める。
 そこで、おれたちは折衷案でいくことにした。
 即ち、同時にバスルームに入り、交互に湯槽と洗い場を使うという手だ。
 おれが憂鬱なのは、何もこの家のバスルームが二人で入るには広いとは言えないことや、この歳で兄弟で一緒に風呂に入るのはどうなのだろうかということではなく、寧ろ入り慣れていることこそ問題だろう。
 互いに一通り体と髪を洗い終わり、揃って湯槽に浸かる。おれの指定席はいつだって兄さんの足の間で、そこでは背中に兄さんの肌の温かさを感じながら小さく体育座りをするより他ない。
 やはり狭い。
 そして、兄さんの初めはバスタブの縁に伸ばしていたはずの腕が徐々におれの腹に回ってきているのも、やはりというべきか。
 腹をさすられ、平らな胸を撫でられる。
 けれど、手のひら全体でゆるゆるとするそれは、まるで犬や猫を撫でているような手つきにも思えて、性的な意味合いもないのにムキになって兄さんの手を強く拒絶するのは何だか余裕のない子供のようで嫌だった。
 こんなことは何でもない。
 そう振る舞いたいのに、反しておれの体は頑なだ。イタチに触れられるところばかりが気にかかる。
 だからだろう、
「っん…」
 臍に指先を入れられたところで、漸くこれは犬猫への愛撫とは違うのだと気が付いた。
 何のことはない。大人ぶりたいおれは初めから余裕のない子供だったのだ。自分に都合のいいようにしか物事を見られないのは、ガキだ。
「ちょっ…兄さん…っ」
「うん…?」
 制止の声に気のない返事をするくせに、おれの臍に入れた指は痛くない程度に中をくりくりと弄っている。
 同時に下腹部を円く撫でられ、身じろいだら顔に湯が跳ねた。
 薄い茂みに指が絡む。
 これ以上はダメだ。
 引き返せない。
 ついに反応し掛けたあれにも触れられ、おれはイタチの手を掴んだ。
「あ…もう…」
 思った以上に声が上擦る。
 これでは制止なのか催促なのか解りやしない。ただイタチは後者と取ったようだった。
 いや、制止と取った上で敢えて知らん顔をしていることも考えられる。イタチは兄だが、信用ならない。
「う…ぅ…ん…」
 先端の膨らみを包まれる。
 上下にきゅうきゅうと締め付けられ、ちゃぷんと波立つ反響と鼻にかかったような甘くなっていくおれ自身の息遣いが無性に恥ずかしい。
 俯くと、兄さんの手淫が飛び込んできて、目を覆って天井を仰いだ。
「も…やめ…」
「本気か?」
 イタチがくっきりと顕れたおれの首筋に鼻先を埋める。音を立てて濡れた肌を吸われた。
「あ…!」
 痕が残る。
 でも、その気持ち良さに体が震える。
 頭の中も体の中も腰の中もざわざわした。まるで静間を乱すあの雨音のようだ。そうしてやっぱりおれには傘がない。
 おれは掴んでいた兄さんの手に爪を立てた。
「風呂に一緒に入るとは言ったが、ヤるとは言ってねえ…っ」
 イタチとするのが嫌なのではない。
 ただ勝手に一方的にことを進めようとするのが気に食わない。風呂場でするのも、気に入らない。どうせならちゃんとベッドでしたい。
 だが、兄さんは心底呆れたという風に嘆息した。
「おれたちは体の関係があるんだから、こんなことは十分予期できただろう」
「それは…」
「それとも、あれだけ触らせておいて、お前はおれには手を出されないとでも思っていたのか?」
 やめて欲しいと言う暇は与えていたぞ、と告げられ返す言葉もない。その暇をおれは思い違いをして過ごしていたのだから。
「それで?やめておくのか?」
 イタチは手を止めた。
 やめてくれと頼めば、兄はきっとこのまま離してくれるだろう。そうして湯の中で温まって、何事もなかったかのように風呂から上がって、飯を作って、二人で食卓を囲むのだ。
 だが、イタチの手の中、既に期待をしているおれがいる。じっとしているせいで余計脈打っているのが体に響く。
 もう引き返せないところまできていた。
 腰が疼いている。早くおれを包むその手を激しく強く動かして欲しい。
 衝動がついに理性を上回り、おれは握っていた兄さんの手首を上下に揺らした。
 途端、塞き止められていた官能が川の堤防が決壊するように下腹部から全身に浸水する。
「あっ、んぅ…っ」
「こら、勝手におれの手を使うな」
「ん…でも…」
 手を止めても今度は代わりに腰が勝手にくねり、兄さんの手に自分のものを擦り付けようとしてしまう。
 湯船が波打った。
 肩まで張っていた湯が洗い場に溢れて流れる。
 湯気が立った。
 顔が熱い。
 汗がどっと滲む。
「兄さん…っ」
「サスケ」
 うなじに流れる汗をイタチの舌に掬われる。
 そうしてそのまま耳の裏に吸い付かれた。あ、そこ、だめだ…。弱いのに…。
「ん…ッ」
「一緒に風呂に入って、それからどうするんだ?」
「…っ」
 くそ。とおれは心中毒づいた。
 もう答えは解っているくせに、ただおれに言わせたいだけなのだ、兄さんは。
「やめておくか?」
 逃げ道を閉ざすようにまた先の方を擽られる。
 湯の中だが、出口を塞ぐイタチの指がおれの先走りでぬるぬると濡れている。
 追い込まれて、追い詰められる。
 崖っぷちだ。おれの中では嵐が吹き荒れている。
「サスケ?」
 そんな風にしたら、促すように右手でおれをちくちくと弄り、左手でその下の袋まで揉まれたら…、あ、あ、もう…。
「…ッめない」
 おれはイタチの首に捻った腕を回した。その長い髪に手を差し入れ、掻き乱す。
 すると、兄さんの手はますます無遠慮になった。
 湯船が兄さんの手の動きとおれの抑えきれない腰のくねりでうねる。
「止めないで欲しいんだな?」
「あっ、ああっ、そう…っ、そうだ…っ」
 後頭部を兄さんの肩に押し付けるようにして預ける。そのまま胸を突き出すようにしたら、喉が反った。
 湯が玉を結ぶ胸の上の頂が尖って赤い。ひりひりと疼く。
 けれど、イタチはなかなか構ってくれそうにないから、仕方なくおれは空いた手でそいつをそろりと摘まんで自ら弄った。恐る恐る、だが、次第に大胆に。
 ああなんて様だ。
 イタチもくっくっと愉快げに喉を鳴らす。
「驚いた」
「っせえ」
 そうは言うが、自分で与えた刺激なのだから頭がくらくらするほど具合が良くて、簡単にはこの手を離せそうにない。
 風呂場に立ち籠る湯気の中、はあはあと湿った息を吐き出す。
「ほら、サスケ」
 イタチの指先がいよいよおれの裏筋を引っ掻いた。
 そのままそこだけ何度もしつこいほど往復をされる。
「あ、あんっ」
 体が跳ねた。
 熱いものがずくんずくんと腰の深いところから込み上げる。
 あ、もう、出そうだ。
 だが、湯の中で出すなんて、子供の粗相のようで絶対にしたくない。嫌だ。それだけは勘弁して欲しい。
 おれはこのまま胸を抓っておきたい衝動から何とか逃げ出し、その手を兄さんが好き勝手をする股の間に突っ込んだ。
 手首をわし掴んで兄さんの動きを止める。本当は辛い。しかし、湯の中でなんてぞっとする。
「どうした?」
 そうしれっと訊いてくるイタチは、本当に解らないのだろうか。兄さんはへんなところで昔から鈍感だ。
 欲を我慢をしている下腹が震える。
「兄さん。おれ、もう出そうだ…」
 訴えるとイタチは「ああ」と頷いた。
「そういうことか。出せばいいだろう。おれは気にしない」
 ばか。
 これでわざとなら、復讐だ。
「おれが気になるんだよ」
「どうせ捨てる湯だ」
「そういうことじゃ…っ」
 ないと言う間もなく、またイタチが根本から先端へと搾り上げてくる。明らかに解放を促すその手つきにおれは焦った。
「っあ、手ぇ…やめろ…っ、中では、あっ、いや…だッ」
 そんな言葉とは裏腹に腰で渦を巻いていた快感が背筋を一気に駆け抜け、脳みそまで突き上げ掛けた、その時だった。
「立てるか?」
 イタチの手が止んだ。
 もうこのまま無理に果てさせられるのだとばかり思っていたおれは瞬きを繰り返す。睫毛に溜まっていた汗が落ちた。目に染みる。視点が定まらない。
 だが、そんなおれをイタチはお構い無しに洗い場へと上がらせた。胸の尖っているあれも、下腹で天を仰いでいるそれも、冷たいタイルの壁に押し付けられる。それで逆上せて茫洋としていた思考が僅かに晴れた。
「部屋へ行かないのか…?」
 浴槽内ではないにしろ、ここは風呂場で、こんなことをするためのところではない。と少なくともおれは思っている。
 だが、イタチはおれの前を今度はゆっくり擦りながら、後ろの窄まりにも触れてきた。唾液で濡らしたらしい彼の長い指がおれの中へと入ってくる。あぅ、とおれは小さな悲鳴を上げた。タイルに立てた指の爪が軋む。
「明日まで続くそうだ」
 イタチはくちくちといやらしい音をおれの中で鳴らした。それが浴室に反響する。前も後ろも責められ、そのうえ耳まで苛まれて、おれには兄さんの言わんとすることが解らない。もう頭が巧く回らない。
「何が…?」
 と二本、三本と増やされていく指にやっとのことで問う。
「雨が、だ」
 それがイタチの答えだった。
「…ふっ…ぅ」
 前への愛撫が次第に御座なりになる。もう兄さんが挿れるまで、きっといかしてはくれないのだと経験で分かる。
 それでも覆うように手のひらで包んでいるのは、先を焦がれたおれが勝手をしないようにするためだろう。焦らされて、焦らされて、タイルは冷たいが、熱く脈打つそれを擦り付けるにはちょうど具合がいいんじゃないか。そんな淫らな想いがじわり腰から広がっていく。
 そうして、それを見透かしたかのように二本の指で孔を左右、上下に拓かれた。イタチのものが入るかどうかを測っているようで恥ずかしい。いや、屈辱的だ。そう言っても何ら差し支えはない。
 体の奥までこじ開けられ覗かれ、いったい誰が平気でいられるというのだろう。
 兄さんでなければ殺している。
「洗濯物が乾かない」
 ああ、本当にイタチでなければこんなことは耐え難い。耐えられない。腹が立つ。誰に?腹を立てることくらいしか出来ないおれに。
 要はイタチは梅雨時のシーツの洗濯が面倒なのだ。だから、部屋はない。ベッドもない。ここでする。そういうことだ。
「アンタなんて嫌いだ」
 女のように丁寧に扱ってくれというわけではないけれど。
 後ろを弄っていた手が腹へと回ってくる。腰だけを引き寄せられ、自然とイタチにそこを突き出すような形になった。
「本気か?」
 イタチはおれに訊ねた。
 そこは「嘘を吐け」と返して欲しい。
 おれは「嘘だ」と答える代わりに背後に息付くイタチのものに自ら尻の窪地を当ててやった。
 熱い。兄さんもどくどくと脈打っている。はあ、とおれは我知らず猥らな息を吐く。
「早くしろよ」
 すると、ふふと兄さんが笑う。
「せっかちだな、お前は」
 いいや、焦らしているのはそっちだろう。
 イタチのものはそれでもまだ何度か尻の間を往復していたが、
「ん…あッ!」
 ついに探り当てた孔に、ああ、挿ってくる。
 腹に灼熱の異物感。重くて苦しい。
 おれは腕を伸ばし、シャワーフックに縋った。だが、もう片方は行く先がなくて、一度収めきった後、徐々に激しくなる兄さんの責めにただただ濡れたタイルの上を滑っていく。
「あっ、あっ、あっ」
 イタチに支えられた腰から体が折れてしまいそうだった。シャワーフックだけが命綱。離してしまったら、ずるずる落ちて崩れて踞ってしまう。
 それを察したらしいイタチはおれの前から手を退けた。無闇にタイルに爪を立ててばかりの手首を掴まれる。そのまま強い力で手首も、それから引き寄せられていたはずの腰も、ぐっとタイルの壁に押し付けられた。
 痛い。手首の骨が、無理に反ったような肋骨が、壁と隙間のない頬骨が痛い。痛い。軋んでいる。
 だが、抗議をする間もなく、今度は踵が浮いたのをいいことに下から押し上げるようにして突き上げられた。
「あぅ…兄さん…っ」
「サスケ…」
 首許を何度も何度も強く吸われる。
 確かにこれほど隙間もなく密着をすれば、床に落ちてしまうこともないだろう。だが、苦しい。それは、はっはっと荒く吐く息になって表れた。
 首筋を往復していた兄さんの唇がおれの唇に寄せられる。振り向くと、こぼれていた舌を慰めのように絡め取られた。
「んぅ…」
 吸われるたびにびりびりと体が痺れる。
 痛ければ痛いほど、苦しければ苦しいほど、おれを痛くして苦しくしている兄さんが優しくて癖になる。
 気持ちよくて、癖になる。
 おれにいけないことを教えたのは兄さんだが、兄さんにそんなことをさせたのはこのおれなのだ。
 自然、タイルで前を擦った。ぬとぬとと先走りが温かい生成り色のタイルを汚していく。
 無機物に自分のものを擦り付けて得る快楽に少しの後ろめたさを覚えたが、体中を細かな針で突っつかれるような官能に、やがてそれも挫かれた。
 タイルとタイルの間の溝に裏筋を擦り付ける。もう揺らされるのではない。能動的に動いていた。
 腰を上下に振り立てる。
 それはおれを揺さぶっている兄さんにも悦びを与えているようで、中で膨らんでいく兄さんが、おれの昂りに拍車を掛けた。
 いきたい。
 けれど、兄さんをいかしてもやりたい。
「あっ、アッ…!兄さん、そこッ、いいっ、いい…ッ」
 虚空に口走る。
 イタチはおれの耳の裏をなぞって舐めた。
「出したいのなら出してもいいぞ」
 肌が万遍なく泡立った。
 もうだめだ。体が震える。いく。いく。いく。それしかなくなる。男だから仕方ない。
「あっ、あっ、あ…ッ!」
 極まった瞬間、ぴしゃりと白い液が壁に飛んだ。
 同時に酷い脱力感に襲われる。シャワーフックを握っていた手が弛む。だらりと垂れかけたそれをイタチはおれの腰ごと腕に抱き直した。
「平気か、サスケ」
 壁から引き離される。片方の手だけがタイルに残った。それはイタチが押さえていなければ用をなさないつっかえ棒だ。
「兄さん…?」
「もう少しの辛抱だ」
 目の前でおれの出したそれがとろりと壁を伝う。
 耳許で囁く兄さんの息はもう荒い。おれはそうかと悟った。
「…なあ兄さん。アンタも出したいんだろう?…おれに出してくれてもいいぜ」
 ぐっと兄さんに尻を押し付けてやる。
 奥深くまで挿入される兄さんのものにおれはまた一つ喘いだ。
「ん…っ、あ…、兄さん…ッ」
「…お前のその強気はいつもおれを困らせる」
 そう言った兄さんも程なくしておれの中で膨らんで果てた。


 雨が降っている。
 点けているだけのテレビがこの雨は明日まで続くと言っている。
 あれから汗を掻いた髪と体をもう一度洗い、風呂から上がって髪を乾かした後、部屋のベッドで何をするでもなく寝転んでいると、いつの間にか二人して抱き合い昼寝をしていた。
 そうしてはっと目が覚めた時には、先に起きたイタチが昼食を作り終え、居間でノートパソコンを軽く叩きながらおれを待っていた。もう昼の三時を過ぎていたけれど。
「食べるだろう?」
 塩昆布の炒飯に、温め直された野菜の和風スープ。
 まともな飯だ。腹の虫がぐぅと鳴く。
「…いつもやれよ、こういうの」
「いつもお前がいるのならな」
 よく言う。
 本当にそんなことをおれがしたら、口煩く家は学校はと言って追い返すくせに。
 だが、そうは思ったが、口には出さないでおいた。
 それよりは兄さんが言ってくれた言葉をそのまま受け止めておこうと思った。
 雨は止まない。
 傘がない。
 おれは濡れて長い風邪をもうずっと拗らせている。