むかしがたり
肌の白い腕がそこに何かを求めるように伸ばされる。明かりを落とした部屋でよく映えるその白は不健康といったものとは全くの無縁で、瑞々しく繊細で、今は生気にさえ満ち溢れていた。
生まれつきなのだ、この白は。
イタチは差し伸べられた腕を取って自身の首に回すのを手伝ってやりながら思った。
日頃は感情の振れ幅をさほど表に出さないサスケだが、慕う兄のイタチに抱かれていると時おり我を忘れるのか、こうした何処か幼い甘えた仕草をする。
サスケのはぁはぁと苦しげでいて切ない呼吸と途切れのない喘ぎは、もう行き着く果てがそう遠くないことをイタチに教えていた。首や腰に回された両腕両脚も、より一層イタチを強く締め付ける。
イタチもまた激しく弟を求めた。こちらにしがみつくような弟のシーツから浮いた背に片腕を差し入れ、隙間なく抱き合う。
耳を擽る弟の泣きの入った声が心地良かった。ふふと笑ってしまう。
すると本来矜持の高い彼は耳敏く「なにがおかしい」と揺さぶりの中、懸命に言った。だが、両腕は離れない。いや、もう離せないのだろう。極みはもうすぐそこだ。
イタチはサスケの背を支えながら、もう片方の手で彼の頭を撫でてやった。
「小さい頃も泣くお前をこうやって抱いたなあと思い出しただけだ」
ぽん、ぽん、とその小さい頃のように抱いたサスケの体を宥めてあやす。
弟の心拍が少しはやくなったような気がした。
「ば…っ」
ばかじゃねえの。
そんなサスケの声はイタチの肩に埋もれて何処かに消えてしまった。