始まりの日
砂粒は指の隙間を擦り抜け、この手に掬いし水は零れ落ちる。
私はそれらを掌の上に留め置く術を持たない。未だ持たない。
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生まれた日
彼は私のケープを握り締め、云った。
「もしも異母弟じゃなく、父親違いの兄弟なら、アンタと俺は何か変わっていただろうか?」
せめて同じ女の腹のぬくもりを得たかったと彼はさめざめと泣くのだ。
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待ちに待った日
「あなたはあなたの神の国に行くが良かろう」
法王逝去。
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怒りの日
さあ諸君、選びたまえ。
忠誠か死か。祈りのない救いか、救いのない祈りか。
私か神か。
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決まった日
またひとつ遠くへ行くんだ、と彼は指にはまった指輪に接吻けて云った。
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普通の日
「やれやれ、今日もお説教ですか?」
「毎日しなければならん状況を作っているのは、誰だね?」
「スミマセーン」
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失くした日
救われた日
「俺のために生きてくれ!」と彼は声の限り叫んだ。
嗚呼、彼は神さえ許さぬ私の生をまだ許すのか。
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忘れられない日
それは突然やって来た。
私に振り返る暇も与えず、胸に飛び込み、笑む。
「ただいま、兄貴」
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終わった日
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