ククールが、窓の無い部屋に居る。
白い壁、高い天井。
堅固に見えるそれは実はとても脆くて。
触れれば崩れることをククールは知っている。
知っているのに、膝を抱えてうずくまる。
あの人が、マルチェロが、そうしろと云うから触れれない。
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ククールが、窓のある部屋に居る。
それでもそっと指先で触れてみる。
少しずつ少しずつ、最後には大胆にドッカン。
光が差し込む小さな穴から外を覗けば広い世界。
そして神の座に突き刺さるかのように高くそびえる窓のない塔。
嗚呼いかなくちゃとククールは窓を乗り越え飛び出した。
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マルチェロが、窓の無い部屋に居る。
白い壁、高い天井。
すると突然、ドカンガラガラガラ。
見れば穴の空いた壁の向こうに安全第一のヘルメットとツルハシを手にしたククールが。
「全く安全第一ではないではないか」
マルチェロは無性に笑いたくなった。
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マルチェロが、窓のある部屋に居る。
「これでは窓というか、たんなる穴だな」
ククールがぶち抜いた穴を検分してマルチェロ。
その向こうから大声。
「兄貴、ちょっとは手伝えよ!」
修理道具を抱えたククールがふらふらそれでもこちらへやって来る。
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兄弟が、窓の無い部屋に居る。
そんなわけで、ふたりで壁塗りぺたぺた。
「ククール、お前は壁塗りさえも満足に出来ないのかね?」
「役立たずですみませーん」
穴には大きな枠とガラスを取り付けて窓にしようと落ち着いた。
只今補修作業中。
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兄弟が、窓のある部屋に居る。
補修の跡もくっきりの白い壁、大きな窓、高い天井。
「兄貴、肩車」
ククールが取り出したるクレヨンで天井に落書きを。
「何故空にキラーパンサーがいるのか非常に理解に苦しむところだが」
さんさん太陽、きらきら星空、ぽっかりお月さま、それはもう決して雨の降らないふたりの空。
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