キスする前に Brothers 10

Abandon
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ぎゅーして。


 「…ハ…」

 「歯…?虫歯なら歯科医の元へ行け。甘いものばかり食うからだ」

 「違うっつーの。だからさあ、そのハグ…ハ…グ…」

 「ハグ…?」

 「だーからっ、ほら、その、ぎゅっだよ、ぎゅ!こう!こんな感じで!」

 「で。それがどうした」

 「どうしたって。だから、したいんだよ。その…アンタと…さあ」

 「ならば最初から抱きしめてくださいと云えばいいものを」

 「そんな恥ずかしいこと云えるか!」

 「…今までの一連のことは恥ずかしくないのか、お前は」




ささやいて。


 耳打ちごにょごにょ。

 「…あ…俺もうダメ…、腰にキタ」




なでなでして。



 「…よしよし」

 「なんでそんなに棒読みなんだよ」




おはなしして。


 「機械的なキス→とりあえずやるだけやる。というのはもう嫌だ!」

 「ではお前はどうしたいのだ。具体案を述べてみよ」

 「ええ!?そりゃ…抱き合って、キスして、なんかいろいろと話して…」
 
 「…ふむ。では今日は話をしてやろう」

 「マジで?なに、なに話してくれんの」

 「税金についてだ」

 「え」

 「税金とは何だ?国王のためのものか?官僚のためのものか?」

 「いや、その」

 「税金を搾取するだけの国王は何をしてくれた。世の不景気を嘆き祈るだけだ。役立たずどもめ」

 「あの…なあ、も、いいから。キスしようぜ?」

 「そんな暇があるなら、税金を有効活用する方法を考えてみろ」

 「…な、なんでこんなめに…」




てをつないで。


 「…えへ」

 「何を照れているのだ、お前は」




ひたいをあわせて。


 「額を合わせて、見詰め合う。これが甘いキスへの第一歩なんだ。な?なーなーなー」

 「…解った」

 ガンッ!

 「ってぇ!これじゃ頭突きじゃねーかよ!」




しせんをむけて。


 「兄貴」

 「なんだ」

 「こっち見て」




かみにふれて。


 束ねた髪をぐいと引かれて、

 「ククール」

 それがキスのためなら、顔を上げさせられるのも悪くない。




あそんで。


 じゃれじゃれべたべた。

 「…邪魔だ」

 「ひでえ。俺が折角雰囲気作りに励んでるというのに!」




ちゅぅして。


 ちゅくちゅく。

 「…ぷはぁ。…あのさあ、前々から進言したかったんだけど」

 「なんだ」

 「いきなり舌を入れるのはよくないぜ?まずは優しく啄ばみからだ」

 「そうして欲しいのか?」

 「して欲しくなきゃ云わねーよ!だからさ、ね、ん〜〜」

 ちゅぅ。オプションでぺろり。

 「…アンタ、エロくせえの」





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