赤。
それもまた三原色の一柱。
火の色。太陽の真。
記憶喪失の街のトラフィックライト。そのストップサイン。
横切る影。法に顔を背けたスポーツカー。
アンドロイドの髪の色。
マニキュア。ペティキュア。アイシャドウ。
ワイン。それは神の子の血の代替。
神さまの農場。
羅列されたトマト。DNAが刻まれたもの。これからされるもの。
賞味期限はいずれも40年!
だが賞味期限を待たずそれらを焼き払った炎。
世界に響く警告ランプ。非常ベル。
誰しもの指からするりと逃げた風船。メモリー。
トリコロールの二色目。ロボットをも愛する博愛主義の蔓延。
白い肌のその下で脈打つまがいものの血。造られた肉体。嘘を吐く舌。真っ赤な嘘に溺れたおんな。
そして第三の道へと繋がって絶たれた俺のコード。
「お嬢さん、お嬢さん」
どうして俺の唇は赤いのかと御使いアランが尋ねれば、獣の女は赤紅の唇で囁いた。
「世界の全てはわたしのキスから生まれたからよ」
レッドキス